2023年は、AppleのApp Storeが誕生して15周年にあたる年です。約20年前にリリースされた初代iPhone(2007年)向けのWebクリップは瞬く間にApp Storeの登場につながり、それ以来、Apple Storeはあらゆるメーカーのデバイスへのアプリ導入の業界スタンダードとなり、ほぼすべての開発者にサポートされるようになりました。幅広い業界にまたがって利用されるようになったアプリは、エンタープライズにおけるAppleの継続的な成長と採用に不可欠な存在であり、私たちの世界との関わり方だけでなく、働き方や学習の仕方をも変えてきました。
このことを考えれば、先日開幕したWWDC 2023の基調講演のテーマが、「ハードウェア、ソフトウェア、サービスの密接な統合が創る未来」であったのも、ある意味当然だったと言えます。
そして実際、この基調講演でAppleは非常に明るい未来を私たちに見せてくれました。
今回の基調講演では、macOS、iOS、iPadOS、watchOS、tvOSの最新バージョンが披露されただけでなく、革新的な最新テクノロジーであるVision Pro(後ほど詳しく説明)の詳細がAppleらしいスタイルで発表されました。
それではさっそく、詳細を見ていきましょう。
新たなソフトウェア
ソフトウェアはコンピュータの生命線です。ソフトウェアがなければ、コンピュータは電力を無駄に消費する金属やガラスでできた箱に過ぎません。
Appleはこのことをこれまで以上に実感し、ソフトウェアの認知度を高めると同時に、仕事、学習、エンターテイメントを支援するより安全で信頼できるサービスを開発するためのハードウェアの活用について、今回のWWDCで強調しました。
さらに、Appleのプロダクトラインを推進させる最新オペレーティングシステムに関しても発表があり、ユーザのセキュリティとプライバシーを確保しながら現在、そしてこれからの1年にわたって新たに登場する新たなユーザ支援機能について説明されました。それではさっそく詳細を見ていきましょう。
macOS
Appleの主力オペレーティングシステムであるmacOSを、Appleは「Macの心臓部」と呼んでいます。そしてmacOSの次なるバージョンとしてmacOS Sonomaが登場します。
macOSに関連する今回のプレゼンテーションを要約すると、「パーソナライズ」「シンプル」「セキュリティ&プライバシー」「楽しさ」の4つの言葉で表すことができるでしょう。言い換えれば、macOS Sonomaの製品デモで紹介された機能はすべて、前述のキーワードのいずれかにカテゴライズされます。それでは、これらの要素について簡単に見ていきましょう。
【パーソナライズ】各ユーザの独自のスタイルに合わせてカスタマイズすることができる機能
ウィジェット
今後は通知センターからではなく、デスクトップからウィジェットを使用できるようになります。さらに、仕事(またはエンターテイメント)に集中したい時には、邪魔にならないように半透明で表示させることが可能です。また、モバイルデバイスのウィジェットと同期されるため、どこにいても便利に使用することができます。
スクリーンセーバ
ロック画面からデスクトップにシームレスに展開するビデオベースのスクリーンセーバが登場します。
【シンプル】頑張らずによりスマートに仕事をするための機能
ビデオ会議
ビデオ会議でコンテンツと共にプレゼンターの顔が表示できるプレゼンターオーバーレイ機能が登場します。この機能はすべての主要なビデオ会議プラットフォームで利用可能になります。
ウェブアプリ
ユーザがお気に入りのウェブサイトに素早く簡単にアクセスできる機能が追加されます。これにより、開発者側で特別な作業を行わなくても、ユーザはアプリを使用する感覚で効率的にウェブサイトにアクセスできるようになります。
【セキュリティ&プライバシー】プライベートや仕事でデバイスを使用する際にデータやユーザを保護する機能
Safari
未使用時のプライベートウィンドウにロックをかける機能や、トラッカーのブロックまたはURLトラッキングの削除を行う機能により、インターネットを使用するユーザの安全を確保します。
パスキー
iCloudのキーチェーンを使用し、エンドツーエンド暗号化(E2EE)で保護されたチャネルでパスワードを安全に共有できます。
プロファイル
閲覧履歴をプライベートのものとビジネスのものに分けてプロファイルごとに別々に保存し、それぞれの認証情報を使用してウェブサイトにアクセスすることができるようになります。
デバイス管理
アカウント駆動型デバイス登録に代表されるエンタープライズ向けデバイス管理の新機能 により、モバイルデバイス管理(MDM)ソリューションへのデバイス登録がより簡単になります。また、デバイスを本番環境に導入する前に特定の条件を満たすことで、設定アシスタントの強制適用を設定することができます。
アイデンティティのプロビジョニング
プラットフォームSSOのアップデートにより、開発者はアカウント作成プロセスをサポートするSSO機能を拡張し、MDMで管理されるアカウントに権限を適用できるようになります。
宣言型デバイス管理のアップデート
デバイスを導入し直したり、ユーザの作業を中断させたりすることなく、MDMソリューションへのシームレスな移行が実現します。
【楽しさ】文字通り、Appleエクスペリエンスをもっと楽しくする機能
ゲームモード
貴重なリソースをゲームに割り当てることで、さらに最適化されたゲーム体験が実現します。この機能は既存のゲームおよび今後リリースされるゲームで利用でき、オーディオやコントローラの入力によって発生する遅延を含め、すべての遅延を低減させます。
ゲーム移植用ツールキット
Metal 3を使用してゲームタイトルを移植する際の開発期間を大幅に短縮することのできるツールキットが登場します。また、小島秀夫監督が発表した「Death Stranding: Director's Cut」をはじめとして、新たなゲームがMac向けにリリースされます。
もちろん、macOSおよびiOS/iPadOS間の継続性により、これらのプラットフォームの統合や共通機能がより強化されます。macOSに登場するその他の新機能については、以下のiOS/iPadOSセクションでも詳しく説明しています。
iOS
macOSがMacの心臓部だとすれば、iOS 17はAppleの代表的なモバイルデバイスであるiPhoneの心臓部と言えるでしょう。世界中の多くのユーザが、外出先であらゆることを行うためにiPhoneを活用しています。iPhoneには果てしない魅力があり、多くの人に愛されるのも当然と言えます。
とはいえ、iPhoneを仕事やプライベートで使う際に、より少ない労力で、今よりももっと楽により多くのパフォーマンスを引き出したいと考える 方も多いのではないでしょうか?Appleの細部へのこだわりときめ細かなアプローチが顕著に現れたiOS17では、プライベートと仕事でiPhoneを使うユーザに、これまで以上の楽しさとタスクの簡素化を提供します。
最新iOSに関するプレゼンテーションでは、コミュニケーション、共有、高度な入力機能、そして以下の3つの主要な機能が提供する新たな体験にフォーカスが置かれました。
本体
- パーソナライズされた連絡先ポスター:好きな写真やフォント、カラーで自由自在にポスターをカスタマイズできるようになります。CallKItフレームワークを使用するサードパーティ製VoIPも利用できます。
- Live Voicemail:留守番電話のメッセージをリアルタイムで書き起こして表示する機能により、今すぐに電話をかけ直すべきかどうかを判断することができます。
- NameDrop:iPhoneやApple Watch間で簡単に連絡先を共有できる機能が追加されます。また、他の種類のデータに関しても、iPhone同士を近づけるだけで共有することができ、途中でその場を離れた場合でも、インターネット上で安全に転送を継続することができます。
- ジャーナルアプリ:日記をつけることは、日々の何気ないことに幸福を感じたり感謝の気持ちを持ったりできるというメリットがあります。そして今回、気軽に日記を始めることができる機能がiOSに登場します。機械学習(ML)を活用したアイデアの提案により、日記を書きながら新たな発見ができるほか、オンデバイス処理やエンドツーエンド暗号化(E2EE)、エントリをロックする機能も利用できます。
- StandBy:時間やバッテリー残量、カスタムウィジェット、スケジュール、スポーツイベント、そしてもちろんSiriなど、1日の始めや終わりに確認したい情報を簡単にフルスクリーン表示することができる機能が登場します。
- オフラインマップ:マップをダウンロードして、ターンバイターンナビゲーション、営業時間、レビューなどの情報をオフラインで使用することができます。
FaceTime
- ビデオメッセージ:FaceTimeで相手が不在の場合に、音声やビデオのメッセージを残すことができます。
- Apple TVでFaceTime:iPhoneのカメラをウェブカメラとして使うことでApple TVでFaceTimeができます。
メッセージ
- 検索フィルタ:詳細な条件で検索結果を絞り込み、探しているものを確実に見つけることができます。
- キャッチアップ:最新の未読メッセージに素早く移動できるので、大事なメッセージを見逃すことがありません。また、スワイプで返信して会話を続けることが可能になります。
- チェックイン:言葉を交わさなくても安全に帰宅したことが確認できる機能が登場します。位置データやバッテリー残量などの情報を友人や家族と共有することで、無事に帰宅したことを相手に知らせることができます。プライバシーに関するデータはエンドツーエンドの暗号化で保護されるので安心です。
- 音声メッセージの書き起こし:音声メッセージを自動的に書き起こし、メッセージを聞くことができない時でも大事な情報を確認できるようにします。
- 高度な入力機能:キーボードに搭載された機械学習機能により、さらに強化されたオートコレクト機能や、インラインごとの予測が利用できるようになります。さらに、ユーザの口調やよく使う表現などを学習することで、これまで以上にパーソナライズされた体験を提供します。
- ステッカー:Live Photosや自分の写真を使って新しくステッカーを作成したり、エフェクトを追加したり、メッセージへのリアクションとして使ったりできます。
iPadOS
今回の基調講演で発表されたmacOSの新機能のほとんどが、iOS、そしてiPadOS 17でも同様に利用できるようになります。
- ウィジェット:ロック画面をカスタマイズすることで、自宅でのメディアストリーミングやホームオートメーションの操作など、iPadの使い方にさまざまなバリエーションが生まれます。
- ライブアクティビティ:フードデリバリーまたはフライトのトラッキングや複数のタイマーをホーム画面から確認できるため、iPadのパーソナライズがさらに一歩進みます。
- ヘルスケアアプリ:ヘルスケアアプリがiPadに新たに搭載され、ユーザの個人健康情報(PHI)をインタラクティブに管理できるようになります。取得したヘルスケアのデータは全てデバイス上で暗号化され、ユーザ間で共有する際にはE2EE機能が適用されます。
- PDFに注釈を追加:機械学習モデルがPDF内のフィールドを選別するため、タッチやApple Pencilで簡単に記入することができます。
- 機能が拡張したコラボレーションツール:プレビューやメモ内で共同作業しているPDFがリアルタイムでアップデートされるようになるため、使い勝手が良くなるだけでなく、FaceTimeと組み合わせて場所を問わない共同作業の可能性が広がります。
- 「メッセージ」のメニューアップデート:メッセージを上にスワイプすると新たなデザインのメニューが表示され、Appleまたはサードパーティーのアプリに簡単にアクセスすることができます。
- 視覚の健康:視覚に関連する問題の影響を最小限に抑えるために、特別なセンサーを利用してスクリーンタイムや画面からの距離を判断することができるようになります。
watchOS
新たにデザインされたwatchOS 10 では、どの文字盤からも情報を見ることができます。また、Apple Watchの管理能力をさらに拡大させるエンタープライズ向けの機能に関する情報も公開され、Apple Watchを監視対象のiPhoneとペアリングすることで、MDMによる登録・管理が可能になります。
Appleは、これにより「従業員の生産性を向上させ、心や身体の健康をサポートし、さらなる安全性を提供するためのソリューションを作ることが可能になる」と説明しました。Apple Watchの登録には、宣言的デバイス管理の構成が設定されたiPhoneが必要となり、構成プロファイル、アプリ管理、MDMコマンド、宣言の利用が可能になります。
コネクティビティ、健康、アクティブで安全なライフスタイルを軸としたその他のアップデート:
- スマートスタック:デバイスに搭載された機械学習を利用して、1日を通して必要な重要な情報を必要なタイミングで表示します。また、Digital Crownを回すことで情報の詳細を見ることができます。
- サイクリング:Bluetooth対応の自転車とペアリングして、Apple Watchとサイクリングデータを共有し、自転車を漕いでいる際のパワーやパフォーマンスレベルを記録することができます。データは自動的にiPhoneと同期されるため、追加費用をかけずにいつでも簡単に確認することができます。
- ハイキング:ウェイポイントと高度計が表示されたコンパスで、ルート情報を確認することができます。また、緊急時に電話をかけられる地点が表示されるほか、マップアプリで様々な詳細が含まれた地形図を確認できるようになります。
- マインドフルネス:日々の気分を記録することで、心の健康の向上に役立てることができます。また、睡眠サイクルや運動習慣を含む健康データを確認することで、日々の健康状態をより深く把握できるようになります。さらに、ユーザが必要なヘルプを得られるように、メンタルヘルスの検査にアクセスし、そのデータを地域のヘルスプロバイダに共有することができます。
- 取得されたヘルスケアのデータはすべてデバイス上で暗号化され、ユーザ間で共有する際にはE2EE機能が適用されます。
tvOS
tvOS 17に新たに搭載された機能により、これまでと違った視聴体験が実現します。
Apple TV 4Kユーザーは今秋より、リビングから誰とでも簡単につながることができるようになり、家の中で一番大きな画面でFaceTimeやビデオ会議を楽しむことができます。
Apple TVで利用できるようになる新たなFaceTimeでは、連係カメラによってiPhoneやiPadのウェブカメラとワイヤレスで接続することでビデオ会議に参加することができ、他の参加者のビデオストリームをテレビの大きな画面で楽しむことができます。また、ZoomやCisco Webexのサポートも開始されるため、ビジネスや教育ツールとしてのApple TVの使い勝手がさらに強化されます。
参加者が動き回っても常にフレーム内に収まるようになる「センターフレーム」や、ジェスチャーでエフェクトを画面に生成させることのできる機能も登場します。
また、iCloudに保存された写真を使ってメモリーを作成し、スクリーンセーバーとして楽しむことができるほか、SharePlay経由でリモートユーザと一緒にテレビや映画を視聴することができるようになります。
オーディオ
音楽を聴く、プレゼンテーションに参加する、混雑した空間で通話するなど、様々なシチュエーションでより快適に話したり聞いたりすることができるようになります。よりダイナミックな最新のオーディオ機能の登場により、よりクリアなサウンドをAppleのエコシステム全体で楽しむことができます。
- 適応型オーディオ:外部取り込みモードとアクティブノイズキャンセリングを動的に組み合わせて、周囲の状況に基づいた形でノイズを削減します。
- 機械学習がオーディオの使用履歴を分析してユーザのリスニングスタイルを理解し、パーソナルなオーディオ体験を実現します。
- アクティブな通話から個人的な使用への切り替えがさらに効率化されます。
- ホテルでAirPlayを利用:QRコードを使って簡単にホテルのテレビに接続し、AirPlay経由でコンテンツをストリーミングすることができます。また、機械学習を活用してユーザの好みやAirPlayの使用状況に合わせた調整を行います。
- SharePlay:iPhoneを持っている人なら誰でも、車内の音楽をワイヤレスで操作できるようになります。
- AirPodsのアップデート:AirPodsをタップするだけで瞬時に音声をミュートし、もう一度タップするとミュートを解除できます。
最新のハードウェア
Appleシリコンは無限の可能性を秘めたチップです。パワフルなパフォーマンスとバッテリライフの両方をバランス良く1つのチップに詰め込んだM1は、Appleだけでなくコンピュータ産業全体に革命を起こしました。また、M2のシリコンオンチップ(SoC)では、Appleエコシステムのすべてのデバイスに見られる軽量かつスリムで洗練されたデザインを犠牲にせずに、パフォーマンスとバッテリ駆動時間をさらに向上させながらシリコンの小型化を実現しました。
そして今回、登場したのがM2 Ultraです。これまでで最速かつもっともパワフルなプロセッサであるM2 Ultraは、Appleがパーソナルコンピュータ用に作った中でもっとも大きく有能なCPUです。2つのM2 Maxチップを融合させることでIntelベースのMacの6倍の速度を実現したこのプロセッサは、巨大かつ非常に複雑なワークフローもあっという間に処理することができます。オーディオエンジニアリングから動画のエンコード、シミュレーションの実行まで、M2 Maxはあらゆるタスクに対応でき、今後もさらなる進化を遂げます。
MacBook Air
MacBook Airの15インチモデルが登場します。 世界で最も売れているAppleノートパソコンの薄さと軽さはそのままに、より大きな画面のモデルが追加されます。重さわずか約1.5キロ、薄さ11.5mmの世界最薄の15インチMacBook Airは、4種類のカラーバリエーションが提供され、性能、解像度、バッテリー駆動時間、美しいデザインを備えながら、IntelベースのMacBook Airより最大12倍も高速になります。また、同等の15インチノートPCに比べ、25%明るいディスプレイや50%長いバッテリ駆動時間を誇りながらも、40%も薄く軽量で、ファンが搭載されていないため非常に静かです。
その他、新たに以下の仕様アップデートが発表されました。
- 18時間のバッテリ駆動時間
- ビデオ通話に最適な1080pフロントカメラ
- 6スピーカーシステムによる没入感のある空間オーディオ
- USB4コネクタ(2つ)
- MagSafe 3充電ポート
- 3.5mmヘッドフォンジャック
M2チップ搭載のMacBook Air 15インチモデルは、2023年6月13日(火)より、179,800円(税込、学生・教員価格)および198,800円(税込、一般価格)から購入可能です。また、13インチMacBook AirのM1チップモデル、M2チップモデルはそれぞれ134,800円(税込)および 164,800 (税込)に値下げされます。
Mac Studio
Mac Studioは、負荷の高いワークフローに耐えられるパワーと高いパフォーマンスを必要とするプロユーザに人気を得ていますが、今回初めてとなるアップデートでM2 Ultraが搭載され、そのパフォーマンスが飛躍的に向上します。
Appleがこれまで開発した中でもっともパワフルなチップが搭載されることで、M1搭載のMacに比べてパフォーマンスが最大25%アップし、Intel搭載Macに比べて6倍高速になります。Mac Studioをコーディングに使用する開発者は作業スピードが25%アップし、ビデオのレンダリング速度も50%削減されます。また、Appleによると、Mac StudioはIntelベースのiMacよりも4倍も速くなります。
さらに、複雑なワークフローに対応するため、8Kディスプレイに対応する機能や、最大8台の4Kディスプレイ、6台の6Kディスプレイ、3台の8Kディスプレイを同時にサポートすることができ、その他にも数々の仕様を備えています。
M2 Maxと最新のM2 Ultra Apple Siliconが搭載されたMac Studioはそれぞれ298,800円(税込)と598,800円(税込)から購入可能です。
Mac Pro
Appleは豊富なラインナップを用意しており、誰もが自分に合ったデバイスを見つけることができます。そしてこのAppleの考えがもっとも顕著に表れているのが、高度なワークロードを必要とするユースケースです。もっとも負荷が高く困難なワークフローでさえ、万能なMac Proなら簡単に処理できます。
そのことを考えれば、Mac ProにM2 Ultraが搭載されるのは当然のことと言えるかもしれません。これにより、192GBのユニファイドメモリを利用できると同時に、ビデオトランスコードやシミュレーションなどのワークフローがIntelベースのMacの3倍の速度で処理できます。それだけではありません。Mac Proには計り知れないパワーが秘められています。PCIe拡張により、gen 4に対応した6つの空き拡張スロット(うち2つがx16、4つがx8)を使ってMac Proを独自のニーズに合わせてカスタマイズすることが可能になります。
さらに、映画や動画の作成に携わるプロのワークフローを進化させるためにAppleが開発したMedia Engine拡張カードであるAfterburnerを使うことにより、Final Cut Pro X, QuickTime Player X、およびサポートされているサードパーティ製アプリケーションでProResやProRes RAWのデコードを加速させることができます。Mac Proは、24本の24Kカメラのフィードの取り込みに対応しており、最大7枚のAfterburnerを使ってリアルタイムでビデオをエンコードすることが可能です。
最後に、ラックマウントのXServeがなくなったことを嘆くIT関係者に吉報です。Mac Proのタワー型とラックマウント型の各モデルは、それぞれ1,048,800円(税込)および1,098,800円(税込)で購入可能です。
Vision Pro
故スティーブ・ジョブズがWWDCのステージに立ち、クパチーノから生まれる最新テクノロジーについて発表していた頃を思い起こさせるスタイルで、CEOのティム・クックからWWDCを締めくくるに相応しい、とっておきの発表がありました。
そしてそれは、控えめに言って度肝を抜かれるものでした。そう、Vision Proの登場です!
Vision Proは、周囲の物理的空間とシームレスに統合された拡張現実を作ることのできるこれまでにない種類のコンピュータです。これまでのコンピュータの場合、私たちはその「上に」映るものを見ますが、Vision Proはそれを「通して」見る初めてのコンピュータになります。物理空間とデジタル空間の間に入り込み、没入できる環境を作り出すこのテクノロジーは、コンピュータが発明されて以来、私たちが理解し、使用してきたコンピュータの定義の枠をはるかに超えた、新たな「空間コンピューティング」という概念を生み出しました。
Vision Proは、簡単に言うと、目や手、 声で操作することのできるフル3Dのインターフェースです。
これは操作の飛躍的な進化を意味します。1984年に誕生したMacintoshのマウスから、iPod第3世代のために設計されたクリックホイールまで、Appleには様々な操作メソードで何十年にもわたってコンピューティングを前進させてきた歴史があります。そしてそこから、iPhoneに代表される携帯デバイス向けの洗練されたタッチ操作や、声を使ったハンズフリーの操作が生まれました。
Apple Vision Proの詳細については、今後のブログでご紹介する予定ですが、これまでに発表されている以下の仕様情報とともに、Vision Proが実際に使われている様子を紹介したこちらの動画も参考にしてみてください。
- EyeSight:周囲に人がいるときや、環境に入り込んでいることを周囲に知らせるために、ユーザの両目をデバイス上に映し出します。
- iCloudを通じてMac、iPhone、iPadと常に同期し、ユーザの世界を映すキャンバスとして機能します。
- ネット閲覧、ToDoリスト、メディアストリーミング、プレゼンテーションのレビューなど、すべてに同時にコネクトすることができます。
- Macをはじめとする他のツールとつながっている間も画面はVision Proの中にしか表示されないため、セキュリティとプライバシーが守られます。
- Vision Proの強力な機能により、空間オーディオを利用した臨場感のある3D写真の撮影と再生が可能になります。それを家族や友人と共有することことで、まるでその場にいるかのような体験を提供できます。
- 切手サイズに詰め込まれた2300万ものピクセルと、臨場感あふれる空間オーディオシステムとオーディオレイトレーシングにより、部屋の環境にぴったり合ったオーディオを実現します。
- M2チップに加え、手のジェスチャを捉えるLiDARセンサーや、目の動きをトラックするLEDやフィードバックセンサーなど、ダイナミックに動作しフィードバックを取得する多数のセンサーからのインプットを新たなR1チップがリアルタイムで処理します。
- Vision Proを機能させるオペレーティングシステムであるvisionOSは、堅牢なmacOSプラットフォームをベースに構築されています。
- ユーザの声や姿をリアルタイムで表現するデジタル版アバター「Persona」がvisionOSによって提供されます。
- Secure Enclaveにより保護され、デバイスのロック解除に使われるOpticIDが登場します。
- 2024年にまずはアメリカで3,499ドルで販売が開始されます。
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