
iOS/iPadOSを搭載したiPhone/iPadは、消費者が入手できるスマートフォンやタブレットの中で最も安全なものの一つです。Appleは、ハードウェア、そしてデバイスで動作するオペレーティングシステムを自社で開発しています。それらは緊密に統合されているため、Appleは、ユーザの期待を上回るカスタマイズされ、安全なエクスペリエンスを提供することができます。
また、Appleは、革新的な新機能や、ユーザーの仕事や遊び方に対する先進的なアプローチでも知られています。これは、今日に至るまで続いている基本原則であり、その証拠に、Appleは毎年、新しいデバイスとそれに付随するソフトウェアをリリースし、世界中のさまざまな業界の数十億人とも言われるiOS/iPadOSユーザーに大きな感動を与えています。
世界中の組織で非常に多くのAppleデバイスが使用されており、そのほとんどがAppleのデバイスでなくてはならない特定のニーズを持っていることから、ビジネスオペレーションにAppleが重要であることは、エンドユーザや経営陣にとって驚くことではありません。
IT部門およびセキュリティ部門は、特にデバイス管理とエンドポイントセキュリティの観点から、このことを理解しています。新しいOSのアップデートには、既知のセキュリティ問題の修正や新しい機能が追加されてユーザーが効率的に作業できるようになることがよくあります。しかし、残念なことに、テストされていない新しいアップデートの中には、IT部門以外にはほとんど知られていない別の問題が潜んでいる可能性があります。
早期にデバイスをアップデートすると、脆弱性のリスク、デバイスの不安定化、既存のアプリケーションやサービスとの互換性の欠如、デバイスのパフォーマンス低下など、様々な問題が発生します。これらの問題は、最適な使用環境とは言えず、最悪の場合、デバイスの安全性が損なわれ、使用できなくなります。
以下に挙げるチェックポイントは、一般に公開される前の新しいアップデートを熟知するだけでなく、自社独自のニーズやソフトウェア要件に照らして徹底的にテストし、セキュリティプロトコルを徹底的に吟味する上で、組織の指針となるものです。これにより、アップデートを受けたデバイスが効率的に動作し、データが保護され、ユーザーに彼らがAppleのモバイルデバイスに期待するエクスペリエンスを提供することができます。
アップデートの詳細を把握する
まず最初に、当然のことながら新しいアップデート自体についてよく理解しましょう。結局のところ、導入しようとしているものについて何も知らないのに、計画を立てることはできません。どのデバイスをサポートしているのか、新しい機能は何か、新しいアップデートのファイルサイズはどのくらいか、現在判明している問題や変更された機能、その他廃止された機能があるとすればそれは何か。これらは、iOS導入計画を策定する上で、IT部門が知っておくべきことのほんの一部です。
「アップデートがまだリリースされていないのに、質問に対する答えをどうやって知ることができるのでしょうか?」非常に良い質問です。Appleのベータテストポータル「Appleseed」は、あらゆる種類と規模の企業を対象としています。無料で登録できるこのサービスは、組織にリンクされた有効なApple IDだけで、iOS、iPadOS、tvOS、すべてのOSの最新バージョンにアクセスすることができます。また、各バージョンのリリースノート、既知のバグや問題点、モバイル機器全体のアップデートプロセスをどのように進めるべきかを決定する際に参考となる導入ガイダンスなどのドキュメントを、Appleが直接提供しています。
Appleseedに参加すると、最新のベータ版のすべてのビルドにアクセスできるだけでなく、最新のファーストパーティ・ソフトウェアとAppleの署名入り証明書をダウンロードしてJamf Proにアップロードすることができ、テスト用に指定されたデバイスへのベータ版ソフトウェアの集中管理とデプロイが可能になります。また、本番前のソフトウェアに共通するバグなどの問題をAppleに警告し、今後のビルドで改善するためのオプションレポートを提出することもできます。
自社の状況を知る
ここでいう「自社の状況を知る」とは、お客様の環境やデバイス、そしてそれらが大規模なインフラ、ガバナンス、会社のポリシーにどのように適合するかを知ることを意味します。簡単に言えば、すべてのデバイスのインベントリを実行して、組織にどのような種類の機器があるかを把握し、導入されているアプリケーションの種類とそのバージョン、デバイスに設定されている構成、セキュリティ設定、ポリシーの種類と、それらが会社のポリシーやコンプライアンス規制とどのように整合しているかを可視化します。
このような詳細な情報は、テストプロセスの生命線とも言えます。なぜなら、このデータがなければ、何を基準にテストを行えばよいのかがわからないからです。比較のためのベースラインがなければ、テストの結果を定量化することもできません。例えば、最近のiOSのアップデートでは、新しいアップデートを実行できるデバイスが制限されることが知られています。もしあなたの組織がデバイスのハードウェアバージョンを評価していない場合、堅実な導入計画を立てること自体はできるでしょう。しかし、あなたの組織のデバイスが最低限の要件を満たしていなかった場合、インストールコマンドを実行するたびにデバイスに拒否されるため、周到に立てた計画も成功しないでしょう。「自社の状況を知る」ことの目的は、計画、テスト、検出された問題の修正に使える時間を最大限に活用し、本番のデプロイ時にリスクとエラーを大幅に軽減または最小限に抑え、すべての関係者にとってスムーズなプロセスを実現することです。
隅々までテストを実施していく
ここまでで、インベントリデータ、アップデートの詳細な仕様、ベータ版プロファイルをインストールしたテスト用デバイスの用意ができました。あとは、アップデートプロセスを実行し、自社のアプリ、設定、構成に異常がないかどうかをテストするのみです。
Appleデバイス管理のスタンダードであるJamfから、ここで一つ大事なアドバイスがあります。必ずすべてをテストしましょう。テストに抜け漏れがあると、後々、導入の際に問題になる可能性がありますのでご注意ください。「一方はこれで十分だと考えるが、もう一方はまだ足りないかもしれないと考える。そうしたいわば紙一枚の差が、大きな成果の違いを生む。」松下電器産業創業者の松下幸之助氏はこう語ります。開発者と協力してカスタムアプリケーションを作成している場合、その開発者はすでにApple Developerアカウントを持っているはずです。そうでない場合は、Apple Developerアカウントにサインアップして、すべてのカスタムアプリケーションを最新のベータ版アップデートでテストし、アプリケーションが意図通りに動作することを確認しましょう。
また、他の部署やユーザーからのフィードバックを受けながら、繰り返しテストを行うのが良い方法です。日常的に使用しているユーザーの方が、これまでの経験から、異常をより早く発見できる可能性が高いことがわかっています。本番環境に導入してから多数の新たな問題を発見し、問題が連鎖的に発展してしまう前に、潜んでいる問題を解決するために積極的なアプローチをしましょう。
課題を発見し、解決策を講じる
テストを通して直面する問題の中には、他の問題よりも規模が大きく、複雑なものもありますが、それでも、後世に残すために、また、それぞれの問題に適切に対処するために文書化する必要があります。将棋の羽生善治氏は、「新しい試みがうまくいくことは半分もない。でもやらないと、自分の世界が固まってしまう。」そう語ります。問題が見つかったことを喜び、実行前に課題を解決していきましょう。
また、アップデートのベータ版でテストしていることを考慮すると、テスト中に発生する可能性のある問題の中には、簡単に解決できないものが含まれていることがあります。これは、まだ新しいアップデートをサポートしていない、またはコードが最適化されていないアプリケーションに問題が起因する場合に特に当てはまります。このような場合には、開発者と直接やり取りをすることで、最良の結果が得られる可能性があります。特定のアプリケーションが最新のiOS/iPadOSをサポートするためにいつアップデートされるのか、リリース予定日を教えてもらえると安心することができます。
また、IT部門が開発者やそのテクニカルサポートチームと直接連携して問題の根本原因を特定し、タイムリーに解決することを求められる場合もあります。いずれにしても、テストを早期に実施することで、解決できない問題の代替案を見つけたり、リスク評価を行ったりして、組織が取るべき最善の道を決定するために十分な時間を確保することができます。
問題が検出されなければ、それはそれで良いことですが、これらのテストはベータ版ソフトウェアで行われていることを覚えておいてください。多くの場合、最終リリースのためのファイナルコードやゴールドコードが開発される前に、いくつかの異なるバージョンのベータ版が開発されます。そのため、可能な限り最良の結果を得るために、各バージョンに対してテストを行うように注意してください。
「準備」というのは、言い訳の材料となり得るものを排除していくこと
見出しの言葉は、元プロ野球選手のイチロー選手の言葉です。イチロー選手は、「準備をしておけば、試合が終わった時にも後悔がないじゃないですか」と言います。アップデートの展開の成功を危うくする可能性のあるすべてのペインポイントを考慮し、それらを解決したり、それらがもたらすリスクを軽減したりするために繰り返し作業を行いましょう。
デプロイメントプランは、これまでのフェーズで行ったインベントリ、リサーチ、テストの総仕上げです。IT部門は、収集したデータとテスト結果に基づいて、最新のiOS/iPadOSアップデートでサポートされるデバイス、互換性のあるアプリケーション(互換性のないものも含む)、展開中および展開後にこれらのデバイスがどのように動作するかを明確に示します。また、新機能への対応、セキュリティの強化、法規制への対応に関する懸念など、Jamf Proに必要なすべての変更を検討してください。
また、多くの機器がリクエストを行うことによる競合など、リソースの需要に応じて計画自体が拡張されるように配慮してください。また、スマートフォンやタブレットで使用されるインターネット接続についても考慮する必要があります。一般的に、Wi-Fiのような広帯域の接続は、セルラー接続に比べてダウンロード速度が速く、全体的なアップグレード体験が向上しますが、セルラー接続では、セルタワー上で通信するユーザーの数が多いためにネットワークが混雑し、速度が低下します。
予期せぬリスクに備えるコンティンジェンシープラン
「収集したデータと実施したテストの結果に基づいて展開計画を作成し、それを忠実に実行した。しかし、何か、あるいは複数の原因があって、計画通りの展開ができなかった。」いくら準備をしても予見できない問題が発生することは非常に多いです。
導入時に発生した予期せぬ問題に対処するために、その後のコンティンジェンシープランを策定しておきましょう。すべてのデバイス、セキュリティ設定、アプリケーションやサービスとの互換性があり、安定していた以前のOSバージョンにロールバックすることができ、ユーザにも経営陣にも安心感を与えることができます。また、この種の計画では、関連部門やベンダー・パートナーを含むITに関わる組織が不測の事態に対処するための解決策を策定し、ソリューションの再テストを行って導入計画2.0に進むことができるようにある程度余裕を持たせ、もし、展開がうまくいかなかったとしても、ユーザが生産性を維持できるよう、対策を練っておきましょう。
アップデートをしないとデバイスを最適な状態に保つことができず、リスクを孕んだ状態であることに変わりありません。適切な準備に加えて、適切なコンティンジェンシープランを用意しておくことで、安心して組織のデバイスを一歩先に進められるようにしましょう。
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