東映アニメーション株式会社 - 東映アニメーション担当者に聞くクラウドシフトを支えるモバイル活用基盤の作り方

日本のアニメーション業界の礎を築いた東映動画。現在は「東映アニメーション」としてアニメーション業界をけん引し、 アニメ業界ナンバーワンおよびデファクトスタンダードを目指し、作品を見てくださる方々に夢や希望を与えています。 東映アニメーションは中野オフィスと大泉スタジオという、2つの大規模拠点を構え、それらを情報システム部とデジタル映像部という2つのセクションで主に管理。 関連会社は国内だけでなく、海外にも営業や製作の拠点を構えています。 常時、6ライン前後のアニメーション作品の製作が進行しているので、納品を止めることはできないという状況です。 昨今、アニメーション業界でも、他の業界と同様にクラウドシフトが急速に進んでいます。海外拠点を含め、ITの標準化を推進している情報システム部課長である賀東敦氏に、納品を止めることはできない状況でクラウドシフトをどのように進めていったのか、またその中でJamfはどのような役割を果たしていったのか、お話を伺いました。

ストレージから始まったクラウドシフト

● オンプレミスの問題をクラウドストレージで解決

東映アニメーションのクラウドシフトは、2015年のクラウドストレージ導入から始まりましたが、課題が多くあったと言います。

「私が製作部に異動した際に、ネットワークの遅延やデータ量の増大、社外からのアクセス管理、機器の保守管理上の問題、といった課題が見えてきました。特に映像を扱う都合上、どうしてもデータサイズは膨大なものになります。 決策としてデータセンターの統合、ストレージ切り替え、回線・機器の刷新を進める中で、Boxの導入からクラウドシフトが始まりました。」

東映アニメーション株式会社 経営管理本部 情報システム部 課長  賀東敦氏。元ミュージシャン/クリエイターで、2004年に入社。Licensed Scrum Product Ownerも保有している。

「製作部では当初ユーザと話がかみ合わないことが多く、とても難儀しました。『サーバに入れない』と問い合わせを受けても、サーバ、ネットワーク、デバイス、アカウント…それらのうち、トラブルの原因となっている個所を『入れない』の一言だけで切り分けることはできません。

そのような状況から製作部の課題を整理し、アカウ ント管理、共有設定、ユーザへのアナウンス、システムメンテナンス、バックアップを改善する必要があると認識しました。これらはオンプレミスならではの問題が非常に多かったため、まずはクラウドストレージ としてBoxを採用するに至ったというわけです。その結果、クリエイター個人のデータバックアップは不要 となり、外付けHDDやNASは縮小、海外子会社や外部とのデータ受け渡しの在り方も改善できました」

ストレージ以降のクラウドシフト施策

● 情報システム部への帰任と新たなミッション

クラウドストレージの導入後、賀東氏は情報システム部に帰任した際に、「働き方改革」としての生産性向上と業務効率向上を指針に、新しく竣工した大泉スタジオに製作プロダクションの機能を戻すというミッションを担当しました。

「対応の方向性として、クラウドサービスのさらなる導入とデバイスの有効活用を通じ、エコシステムの構築とゼロトラスト化を進めるという策を提案しましたが、上層部から『当社はIT企業ではない』と、特にコスト面で理解を得ることができませんでした。そこでBoxの全社展開などは一度ペンディングし、一部社員へのiPhone配布、Cisco Merakiの導入によるネットワークの可視化、iOS向けのJamf Pro導入といった取り組みを進めました」

● Jamf Proで解決したインハウスアプリの配布

「2018年にデジタル映像部から、iPadにアニメ製作ツールを配布したいとのリクエストがありました。しかし、それまで使用していたMDMでは、インハウスアプリの配布ができなかったのです。これが大きなきっかけとなってJamf Proの導入に至りました。Jamf Proでは、インハウスアプリの配布を問題なく行うことができました。それ以外にも、Mac の管理を是正したい、といった課題がありましたので、同時に解決できる Jamf Proは最適です。そこでmacOS版のライセンスも購入しています」

Jamf Proの効果は大きく、課題を次々とスムーズに解決できたと言います。まず、Macのキッティングにおける問題がほぼ解消し、具体的には、アプリがインストールされていないといったトラブルから生じる負担は大幅に軽減され、サポートチームとユーザの両者において効率化を達成。ユーザに配布するデバイスの運用は、Jamf Pro導入によって一定レベルでの整理ができました。

特にJamfのSelf Serviceは強力です。アプリや設定のインストールが必要になったにユーザが自己解決できるので、サポートコストが大幅に軽減されています

● パッチの適用を機械的に実行できるメリット

また、賀東氏は、セキュリティの最新化もJamf導入の大きなメリットの一つと話します。「Jamfのように優れたMDMを導入していない環境では、最新のセキュリティパッチを適用する際に、ユーザへのアナウンスが必要であったり、中にはパッチをインストールしないユーザが存在したりと、効率とセキュリティのどちらの面でも問題があります。パッチの適用を機械的に実行できるメリットはとても大きいと言えるでしょう。特に海外の拠点へは、そう頻繁に足を運ぶことはできませんので、物理的な面でも大変助かっています」

● シングルサインオンでクラウド化を前進

「MDMを以前使用していたものからJamfに全面移行する際に、SSO(シングルサインオン)サービスとしてOktaも導入しています。Boxや社内ポータル、Adobe CCなど、あらゆるアカウントのパスワー ドをユーザ側で管理する必要がなくなり、業務効率が向上しました。その後、SlackやZoomの導入を予定していましたので、パスワード管理のさらなる煩雑化が想定されていましたので、そういったクラウドのさらなる前進に備える意味でも、SSOのシステム構築は必要でした」

Jamf Connectでさらなるユーザと管理者の負担軽減

● リモートワークの本格化にも柔軟に対応したクラウド基盤

Boxでファイル、Jamfではデバイス、OktaでユーザIDをそれぞれ効率的に管理できるようになり、クラウド化の基盤がある程度固まり、ユーザ対応において都度発生するような事案の大部分は解消しました。

「緊急事態宣言により、皮肉にもクラウドシフトは急激に進んでいる状態です。あらかじめクラウドの基盤となる部分の構築が済んでいたので、リモートワークが本格化した時にはすべてがスムーズに進められました」

● セキュリティの向上とともに煩雑な作業を削減

情報システム部では、その後、Slack Enterprise Grid、Zoomなどを導入し、現在はJamf Connectの導入検討を進めています。 

Jamf Connectの導入は、さらなるユーザと管理者の負担軽減を狙ったものです。MacをActive Directory環境で利用している方々は、Active Directoryへのバインドといったとても煩雑な作業を強いられているのではないでしょう か。その時間はもっと生産性の高い別の作業に割り当てるべきです。 弊社ではWindows端末も多いので802.1x認証が残っていますし、データが非常に大きく大量なのでオンプレのサーバをすべて排除することはできません。そういったオンプレサーバへのアクセスコントロールも、都度、ADバインドとセットで行うと、非常に大きな負担となります。そういった負担もJamf Connectで解消できればと思っています。 最終的にはOktaのIDで即座にログインさせることを目指しています。指紋や顔認証だけでログインしてもらい、ユーザのパスワードの存在自体を忘れるような形が理想です。アカウントの管理が一元化され、なおかつそれが生体認証に置き換われば、管理者・利用者の負担は著しく軽減できます」

ユーザが難しいことを一切考えず、仕事に集中できる状態に

● 多種多様なユーザからのアクセスを適切に管理していく

 賀東氏は、ユーザが難しいことを一切考えず、仕事に集中できる状態を実現することが、情シスが目指すべきところと話します。

「どこの拠点でも、リモートであっても、どんなデバイスからでも、同じように仕事ができれば利便性は高くなります。出社しなければアクセスできない、配布された端末でなければ作業できない、複雑な条件を満たさなければ使えない、といったハードルを排除していくことが今の目標です。

社員、業務委託先、クライアント、デベロッパー、海外スタッフ、フリーのスタッフなど、非常に多種多様なユーザからのアクセスを適切に管理していくことは、大きな課題となってきます。どういうデバイスを許容するのか、どのデータへのアクセス権を付与するのかを、ロジカルかつシンプルに整理していかなければ、どこかで破綻してしまいます。

ユーザ種別の分類に関しては引き続き検討を続け、どこかで共通の見解を立てることが非常に重要であると考えています。そのうえで、ユーザ種別、扱うデー タ、使用するデバイス、仕事上の役割といったものを個別にイメージしていけば、必要なソリューションや製品は自ずとわかってきます。 そういった観点から、現在必要なのは『Jamf ConnectをIntune、AzureADと併せて導入すること』という結論に至り、それを推進しているというのが現在の状況です」

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